さらば愛しきルパンよのあらすじネタバレ考察!感想も合わせて解説!

さらば愛しきルパンよのあらすじネタバレ考察!感想も合わせて解説!アニメ
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1971年のテレビ放送開始から現在まで根強い人気を誇る『ルパン三世』シリーズ。

キャラクターも多彩で、ルパンはもちろん、次元大介、石川五右衛門、セクシーで美人の峰不二子といったレギュラーの他に、登場する悪役も個性的な面々が登場。ファンを楽しませてくれます。

 

シリーズでは、あらすじもったものが多く、『ワルサーP38』や『死の翼アルバトロス』『さらば愛しきルパンよ』など数々の傑作も生まれました。

 

今回は『ルパン三世』シリーズの中でも、最も人気が高いとされる最終作『さらば愛しきルパンよ』のあらすじやネタバレ、考察をしてみたいと思います。

また、ネタバレ、考察ともに、感想なども盛り込みみたいと思います。

 

 

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さらば愛しきルパンよのあらすじ

 

1981年、東京。買い物客や観光客、通行人でにぎわう街の上空にロボットが現れます。

人々が目を見張る中、地上に降り立ったロボットは宝石店を破壊しながら店内へ侵入、宝石や貴金属を強奪して立ち去ります。

宝石店では警察へ通報。警官隊が出動してロボットへ拳銃で攻撃しますが、拳銃の弾などものともしないロボットは平然と飛び去ります。

 

後日ルパンから、ロボットの非人道性を世間に知らせるため、との犯行声明が発表されます。

実は、ロボットの操縦をしていたのは小山田マキという美少女で、ロボットは父親の故・小山田博士が永田重工の資金援助を得て開発した装甲ロボット・ラムダ。

日本に帰国して事件を知った銭形警部は、ルパンがそんなことをするはずがないと主張。政府はラムダの破壊を決定、銭形警部にはルパン逮捕の命令が下ります。

 

偽ルパンはラムダを放ち、暴れるように指示。ラムダの破壊を命令された国防軍が出動しますが、はやり立った国防軍は戦車で渋滞の列に突入、ビルにも大砲を浴びせ、犠牲者が続出します。

混乱の中、ルパン一味に捕まった銭型警部は、ルパンたちが偽物であることを見破ります。

 

ラムダは国防省が極秘に開発した装甲ロボットで、一連の騒動は、やっかいなお荷物となったラムダの売り込みのために永田重工の社長が計画した犯行であることが判明。

ラムダの危険性を社会に訴えようと考えていたマキは、偽ルパンにだまされていたことを知り、自分の行動の愚かさを悟ることになります。

 

偽ルパン一味と黒幕の社長は、売り込みのための計画が成功したことを喜び、用済みとなったマキを縛ってラムダに乗せ、国防軍が迫る中、ラムダもろとも抹殺しようと図ります。

しかし、偽ルパンに捕まっていたのは銭形警部に変装した本物のルパンで、間一髪で爆破を逃れたルパンはラムダに飛び移り、マキを救出して、黒幕たちのいる永田重工ビルへ向かいます。

 

本物のルパン、次元大介、五右衛門の三人が現れたことを知り、黒幕の社長はロボット兵“シグマ”を使い、最後の抵抗を試みようとします。

しかし、シグマはすでにマキによって制御装置に改良が加えられており、ルパンを襲撃するはずのシグマは逆に黒幕たちに向かうことになります。

 

朝日が昇る海岸の道路。

ルパン、次元大介、五右衛門の三人を乗せたフィアットの横をバイクに乗った峰不二子が走り抜け、朝日に輝く道の彼方へ消えていきます。

 

さらば愛しきルパンよのネタバレ

 

1977年(昭和52年)10月3日から3年間、155回にわたって放送された『ルパン三世』セカンドシリーズ。

その最終回を飾ったのが『さらば愛しきルパンよ』で、ルパンシリーズの中では最も人気の高い作品。

登場する戦車や東京の街の情景など、細部にまでこだわったクオリティの高い作画は、それ以前のルパン三世を凌駕。

 

それもそのはずで、脚本・演出にあたったのが照樹務てるきつとむ(テレコムとも読ませています)こと宮崎駿氏で、この作品の中で、それまでのルパン像を壊し、自身の持つイメージに近づけています。

宮崎駿はこんなことを言っています。

 

むかしのルパンは人殺しはしませんでした。ところがいまのルパンは目標がないから、人間がマトなんです。世の中といっしょになって複雑怪奇な殺戮を繰り返していますよ。

引用 : アニメの部屋

 

宮崎駿の言葉通り、『さらば愛しきルパンよ』の中のルパンは従来のイメージとは違って、愛用のワルサーを持たず、徒手空拳で犯罪の黒幕たちと対峙します。

また『さらば愛しきルパンよ』では、ホンモノのルパンの出番は少なく、次元大介や五右衛門にいたっては、セリフらしいセリフがほとんどありません。

 

宮崎駿は第2シリーズのルパンを嫌っており、自身も演出を頼まれながら断わったという経緯から、それまでのルパン像を壊す意図があったようです。

そのような事情から本名を使わず、照樹務の変名を使って脚本・演出を引き受け、ニセモノのルパンを暴れさせて葬ることにより、ルパン再生の意図があったのではないかと思います。

 

また宮崎駿は、いまの時代(1980年当時)にルパンを描くのであれば、ワルサーも持たず、ラッタッタ(ホンダのロード・パル)に乗って走り回るのがいいとも言っています。

『さらば愛しきルパンよ』のルパンは宮崎駿が創り上げたルパンといってもいいでしょう。

 

一方で宮崎駿は初期のルパンは好きだとも言っていますから、ルパンの全否定ではなく、第二シリーズの無意味に殺人を繰り返すルパンを嫌ったのでしょう。

初期のハードボイルドの世界に生きていたルパンたちが時代に合わなくなってきたというのも事実で、ルパンが時代に取り残されたということもできます。

1970年代も後半に入ると、第三次世界大戦の恐れこそなくなったものの、核戦争の不安が増し、軍拡の時代へと世界が動いていく中で、ワルサーを片手に暴れ回ることにどんな意味があるのか。

 

宮崎駿の反戦思想の中に、人間に代わって戦争を行うロボット兵の登場や、戦争を起こして潤う軍需産業への怒りが『さらば愛しきルパンよ』で、巨大な悪と戦うルパンとなったようです。

ただし、この最終回についてはルパンファンの一部や制作者サイドからの反発があり、トッピな話にしてしまったのが、かえってヒンシュクを買ってしまった、と宮崎駿も反省することに…。

 

さらば愛しきルパンよの考察

 

ファン投票で1位になり、また作品への反発もあるなど、様々な反響を呼んだ『ルパン三世』セカンドシリーズの最終回『さらば愛しきルパンよ』。

『さらば愛しきルパンよ』について、以下の3点を考察してみたいと思います。

 

  • さらば愛しきルパンよとナウシカの関係性
  • さらば愛しきルパンよのロボット兵(ラムダ)と天空の城ラピュタの関係性
  • さらば愛しきルパンよの本物と偽物について

 

その後のスタジオジブリの作品となる『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』には、萌芽として『さらば愛しきルパンよ』が関係しています。そのいくつかを考察します。

 

さらば愛しきルパンよとナウシカの関係性

 

『さらば愛しきルパンよ』に登場する小山田マキと、『風の谷のナウシカ』のヒロイン、ナウシカはどこか共通するものがあります。ここではマキとナウシカの関係性についてみていきます。

 

『さらば愛しきルパンよ』の主人公は小山田マキです。主人公のはずのルパンが最終回で脇役に甘んじたのについては後ほど述べるとして、ここでは小山田マキに焦点を当てます。

小山田博士の一人娘のマキは、博士が開発したロボット“ラムダ”が軍事利用されるのを防ぐため、ラムダの危険性を社会に訴えようと行動を起こします。

しかしそれは危険な行為で、宝石店を襲撃して警察隊を相手に戦うのならまだしも、国防軍が出動して戦車で発砲、民間人が犠牲になるという悲劇を生みます。

 

一方、『風の谷のナウシカ 』。

産業文明を崩壊させた最終戦争から1000年が経ち、汚染された地上にはびこる菌類が住む“腐海ふかい”の広がる世界に住むナウシカを含む風の谷の小国と、いくつかの国家や部族。

菌類が出す猛毒ガスの“瘴気しょうき”は人間が吸い込むと肺が侵されるため、防毒マスクが欠かせない過酷な環境。ナウシカの父で族長のジルは猛毒にやられ、死の床についています。

 

父に代わって風の谷を率いるナウシカは、列強との闘い、そして巨大な“むし”の集団から風の谷を守るため死力を尽くして戦うことになります。

 

マキとナウシカ、この二人の関係性においては、暗い宿命を負った悲劇の美少女だということです。マキの父、小山田博士は死に、ナウシカの父ジルもまた命を落とします。

そしてまた、二人に共通しているのは、巨大な敵、国家に対して敢然と戦いを挑んでいく姿です。

こういった設定で思い出すのは『スター・ウォーズ』(1977年)のレイア姫ですが、レイア姫がオビ=ワン・ケノービに助けを求めたのに対し、マキとナウシカは単身で戦おうとします。

 

社会的、肉体的にも弱さを持った(ナウシカは強そうですが)女性を、命がけで戦うヒロインとして描くことで、同じような境遇で生きる女性はもちろん、男性にも勇気を与えていると思います。

過去にも戦う少女を描いた『リボンの騎士』のサファイアや、『ベルサイユのばら』のオスカルなどがいましたが、彼女たちは小さいころから男子として育てられ、騎士として成長しています。

 

可憐な印象を与えるマキとナウシカ。しかし心の奥に熱い魂を持った美少女たちです。

 

さらば愛しきルパンよのロボット兵(ラムダ)と天空の城ラピュタの関係性

 

産業革命時代を背景にした『天空の城ラピュタ』は、伝説の空中都市ラピュタをめぐって展開される冒険ファンタジー。

鉱山で働く機械工のパズーはある日、空から落ちてきた美しい少女シータを助け、シータの持っていた飛行石の争奪から、海賊のドーラ一家や特務機関に追われることになります。

逃亡の途中、空中に浮かぶ伝説の城の実在を確信したパズーとシータは、ラピュタの場所を指し示す飛行石によって、ドーラ一家の協力のもと、天空の城ラピュタへ向かうことになります。

 

『天空の城ラピュタ』に登場するのが2種類のロボットで、一つは戦闘用ロボット、そしてもう一つはラピュタの庭園を守っている園丁ロボットです。

この2種類のロボットにほとんどそっくりなのが、その原型とされる『さらば愛しきルパンよ』に登場するラムダ。

 

ロボットは高い技術力によって作り出されるもので、いわば文明の高さを証明するものですが、それは一方で諸刃もろはつるぎとなることも歴史は示しています。

原子力なども有効に使えば人類の進歩に多大な恩恵を与えるものですが、逆に、軍事力に利用された場合は人間を殺傷どころか、人類の滅亡すら招きかねません。

それを端的に表したのが『さらば愛しきルパンよ』のラムダです。ラムダ自体は意思を持ちませんが、それを扱う人間によって、強盗もすれば街を破壊することもできます。

 

『天空の城ラピュタ』に登場するロボットは名前を持ちませんが、ラムダを二つの側面に分離したような印象があります。

戦闘用ロボットは言うまでもありませんが、ここで特に心に残るのが園丁ロボットで、ラストでラピュタが崩れ、園丁ロボットもまた、たった一人で孤独な生涯を送ることになります。

もちろんロボットですから、そこに人間的な意思はなく、プログラムされた日常があるだけなのですが、擬人化された対象として、観る者に切ない感動を与えます。

 

しかし、ここで考えられるのは、園丁ロボットもまた、プログラムを変えれば戦闘用ロボットに変わりうる可能性があるということです。

 

『天空の城ラピュタ』は寓話ぐうわとして見た場合、とても興味深いものがあります。もともと高度な文明を誇ったラピュタは一方で強大な軍事力も持っていたことです。

生活の便利さの陰に軍事の影響があることも事実で、現在当たり前のように使っているナビゲーションシステム、インターネット、これらも元は軍事用に開発されたものでした。

豊かな生活を保証してくれていた原子力発電も、一歩間違えれば大惨事を引き起こすことを私たちは思い知らされました。

 

『さらば愛しきルパンよ』のラムダと、『天空の城ラピュタ』に登場するロボットの関係性では、高度な科学力をもてあそぶことの危険性隠喩いんゆとして表しているようにも思います。

 

さらば愛しきルパンよの本物と偽物について

 

最終回の『さらば愛しきルパンよ』に、なぜルパンのニセモノを登場させたのかについてはネタバレで触れたように、照樹務こと宮崎駿が第二シリーズのルパンを嫌っていたことがあります。

しかし、小山田マキをそそのかすのが、なぜニセモノのルパンでなければならなかったのか。他の、善人ヅラをした悪党はいくらでもいると思いますが。

マキが科学者の娘で世間知らずなのかもしれませんが、ルパンはなんといっても有名なドロボー。しかしまあ、初心うぶなカワイ子ちゃんですから、コロッとだまされてしまったのかもしれません。

 

ニセモノのルパンは最初のころは本物とよく似ていますが、徐々に目が垂れてだらしのない顔つきに変わっていきます。

帽子をかぶっているニセモノの次元大介の表情はよく分かりませんが、ニセモノの五右衛門などもルパンと同じく、最後のほうはしまりのない顔に変わってしまいます。

 

なかなか登場しない本物のルパンは、マキが縛られて閉じ込められたラムダに飛び移って、ようやく姿を見せます。こちらはまたキリッとしまった男前のルパン三世。

本物と偽物の対比はここに極まった感があります。

ニセモノの登場時間は長く、本物が登場する時間はほんのわずかだというのも、なにか皮肉めいてみえます。さらに本物のルパンは愛用のワルサーも持っていない。

 

これは宮崎駿も述懐しているように、トッピな話で、これまでの(シリーズの)ルパンは偽物で、最後の最後になって(最終回で)登場したのが私(宮崎駿)のルパンだといっているようなものです。

宮崎ルパンの登場というところでしょうか。

 

さらば愛しきルパンよの感想

 

ほとんど文句のつけようがないくらいクオリティの高い作画で、登場人物、特に女性の描き方はとても魅力的です。

女性を描くことで最も優れていると思うのは手塚治虫ですが、宮崎駿の作品に登場する女性たちも手塚治虫作品に負けず劣らず魅力があります。

ヒロインはもちろんですが、『風の谷のナウシカ』の皇女クシャナや、『もののけ姫』のエボシ御前など、ヒロインと敵対する女性たちもとても魅力的です。

 

『さらば愛しきルパンよ』ではルパンは脇役にまわり、その後のスタジオジブリ作品のヒロインとなりそうな小山田マキが主役といっていい設定になっています。

個人的な感想を率直に述べると、これはルパン三世シリーズでやるべきではなく、他の長編アニメーションでやるべきで、宮崎駿の独善(言葉は悪いですが)のように見えます。

ルパンの第2シリーズは嫌いと言っている宮崎駿は、一方で初期のルパンは好きだとも言っているのですから、原点に戻って、ワルサーを片手に最後の大仕事に挑むのもよかったのではないか。

 

あの作画のクオリティで原点に戻れば、素晴らしいドラマが出来たようにも思います。

『さらば愛しきルパンよ』は宮崎駿の哲学を押し付けてしまったような感想が正直なところですが、クオリティの高さ、ラストの朝日が昇る海岸線を走るフィアットのルパンたちと峰不二子。

最終回にふさわしい美しいラストシーンでした。“終わりよければ全てよし” ということにしますか。

 

まとめ

 

ルパン三世第2シリーズの最終回『さらば愛しきルパンよ』について、あらすじやネタバレ、感想なども合わせて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。

また考察として、

 

  • さらば愛しきルパンよとナウシカの関係性
  • さらば愛しきルパンよのロボット兵(ラムダ)と天空の城ラピュタの関係性
  • さらば愛しきルパンよの本物と偽物について

 

なども合わせてみてきました。

 

30分に満たない短い作品でありながら、長編アニメーション一本分の重量感を持った密度の濃さは群を抜いています。

ルパン三世シリーズに対する宮崎駿の捉え方や思い入れ、日本や世界の軍需産業への批判が色濃く反映された内容の作品であったと思います。

美少女小山田マキやロボット兵ラムダなど、80年代以降、次々と登場するジブリ作品のキャラクターの原型がここにはあり、宮崎駿作品を語る上で欠かせない作品と言っていいと思います。

 

 

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