スタジオジブリの大ヒット長編アニメーション『千と千尋の神隠し』(2001年)。
異界へ迷い込んでしまった10歳の少女、荻野千尋と、異界の住人たち、そして八百万の神たちが集う湯屋を中心に展開される冒険ファンタジー。
様々なキャラクターが登場する『千と千尋の神隠し』ですが、その中で、没個性のような存在でありながら、千尋(千)に付きまとうカオナシ。
千尋(千)に好意を持ちながら、自分の好意を上手く伝えられず、なぜ千尋が好きなのか、千尋を欲しがる理由は何なのか、映画を観ている私たちにはよくわかりません。
カオナシが千尋を欲しがる理由、そして、なぜ千尋が好きなのか、考察してみました。
カオナシが千尋を欲しがる理由とは?なぜ好きなのか徹底考察!
千尋に好意を寄せるカオナシ、なぜそれほど千尋が好きなのか、4つほど挙げてみました。
- ① 千尋だけが自分を認めてくれる
- ② 欲望を持たない千尋に興味
- ③ 自分と同じタイプの千尋
- ④ 自分の居場所を見つけてくれる
それでは、一つずつみていきましょう。
① 千尋だけが自分を認めてくれる
あ…。 カオナシ / 千と千尋の神隠し pic.twitter.com/C01y1OCLrK
— スタジオジブリ名言bot (@jiburicollecti2) December 22, 2021
カオナシは誰にも振り向いてもらえない存在であるようです。
「あ、あ、」などのか細い声でしゃべるだけで、気弱でコミュニケーション能力に乏しい没個性の存在。
雨の降る中、湯屋へ入ろうとしたいのですが、入ることができない、それを見かねた千尋が「こっちに入ってきてもいいよ」とカオナシを優しく招き入れます。
「カオナシは誰の心にも存在する」と宮崎駿が語っているように、存在の理由のひとつに気弱さがあるように思います。
友だちの輪の中に入っていけず、一緒に遊ぼう、と言うことができない、いつもひとりで遊んでいる子どもというものはいるものです。
そんなとき、こっちへおいでよ、一緒に遊ぼうよ、と言ってくれる友だちの存在はとても嬉しく、無条件で好きになってしまうと思います。
千尋の優しさがカオナシの孤独を癒し、その存在を認めてくれたことで千尋に好意を持ったのだと思います。
とはいえ、カオナシは魔界の存在、千尋が招き入れたことによって、その後の湯屋には大混乱が生じることになります。
② 欲望を持たない千尋に興味
~千と千尋の神隠しあるある~
千尋が息を止めるシーンで一緒に息を止める pic.twitter.com/jKZhzvuJnE— ホットロッドΩDAL (@rorikon_card) December 22, 2021
湯屋へ入ったカオナシは砂金をこぼし、それを見つけた従業員たちが大騒ぎをする中、大量の砂金をばら撒いて従業員たちを手なずけます。
下働きの青蛙を飲み込んだカオナシは、青蛙の声を借りて、山のようにご馳走を持ってこさせて食べて巨大化していき、凶暴性を発揮するようになります。
砂金(実際は土塊)を出せばみんなにチヤホヤされ、なんでも言うことを聞くと思ったカオナシは千尋にも砂金を見せて関心を引こうとしますが、千尋は興味を示そうとしません。
どうしても自分に従おうとしない千尋に腹を立てたカオナシは、千尋まで呑み込もうとしますが、千尋から与えられた団子によって、それまで呑み込んでいた全てを吐き出します。
千尋の関心は、豚に変えられた両親や、瀕死のハクを助けることであり、金銭に対する欲望ではなかったため、カオナシの心は混乱します。
すべてを吐き出して元の気弱な姿に戻ったカオナシは、みんなとは違って砂金に欲望を見せなかった千尋に興味を持ったのでしょう。
③ 自分と同じタイプの千尋
今回も😉
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「千と千尋の神隠し」に関する質問 受付中👍この投稿に返信し「#千と千尋の質問」を付けて質問を書き込んでください❗️
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甘ったれで、泣き虫で、ドンくさい、とリンに散々な言われようをされる千尋ですが、無気力さが漂っていたのも千尋の特徴でした。
その千尋は湯屋で働くうちに、リンや湯婆婆にも一目置かれる存在へと成長していきます。
一方のカオナシは魔界の存在でありながら、気弱で、他人の声を借りないと自分の意思を伝えることができず、大食という自分の欲望を満たすこともできません。
千尋とカオナシに共通しているのは、本来の無気力さや気弱さが何かのキッカケで変化をしていくということです。
それが変化なのか、元々持っていた自分が表面に現れるのか、いずれにしても千尋の場合は無気力さを脱した良い方向であるのに対し、カオナシは凶暴性を持った悪へと変化をします。
自分を持て余すカオナシですが、自分とは逆の面を持つ千尋に共通性を感じ、惹かれていったのではないでしょうか。
④ 自分の居場所を見つけてくれる
◆ジブリが『千と千尋の神隠し』の質問に答える企画をスタート!https://t.co/bs4oaIYHuh pic.twitter.com/DeKyJCVYF6
— ジブリのせかい【非公式ファンサイト】 (@ghibli_world) December 28, 2021
孤独な存在としてのカオナシは自分の居場所を持っていません。
ハクと一緒に橋をわたる千尋を見かけたカオナシは、人間である千尋が異界に受け入れられているのが不思議だったのでしょう、そのまま千尋の後ろをついていきます。
その後、千尋によって湯屋へと招き入れられることになり、その瞬間、自分を導いて居場所へと案内してくれる存在として千尋に関心と好意を持ったのだと思います。
それはやがて千尋によって、湯婆婆の双子の姉、銭婆の家へ引き取られていくことで自分の居場所が見つかるという落ち着きをみます。
まとめ
カオナシが千尋を欲しがる理由とは?なぜ好きなのか徹底考察! ということで、4つの理由を考えてみましたが、いかがだったでしょうか。
- ① 千尋だけが自分を認めてくれる
- ② 欲望を持たない千尋に興味
- ③ 自分と同じタイプの千尋
- ④ 自分の居場所を見つけてくれる
誰の心にも存在する、と宮崎駿監督が語るカオナシは、没個性であるがゆえに個性を持つ不思議なキャラクターです。
自分の意思を相手に上手く伝えられないコミュニケーション能力の欠如は、恋する少女の前に出ると何も言えなくなってしまう少年の姿にも似ています。
一面では傲慢で凶暴性を持つカオナシが、なぜ千尋に好意を持ったのか、お世辞にも美少女といえない千尋ですが、そこには千尋に対する恋といった側面も少しはあったのではないかと思います。
いろいろな理由が考えられるカオナシの千尋への好意も『千と千尋の神隠し』の物語のふくらみを持たせていると思います。