シシ神の森を守り、森に棲む生き物たちから神として尊敬されるシシ神様。
昼と夜ではその姿は違い、巨大な山羊の体と猿のような赤い顔、人間の賢者を思わせる風貌の昼の姿とは反対に、夜になると、森全体を包み込むかのような巨大なディダラボッチへと姿を変えるシシ神様。
生き物の生と死を操る霊力を持つシシ神様の首を狙うのが、「もののけ姫」の中ではユニークなキャラクターのジコ坊。
タタラ場を支配するエボシ御前を巻き込んで、なぜか執拗にシシ神様の首を狙う、その理由は何なのでしょうか?
「もののけ姫」のストーリー展開の中で太い軸となる、ジコ坊たちがなぜシシ神様の首を狙ったのか、その理由を考察してみました。
もののけ姫のシシ神様の首を狙ったのはなぜ?理由について徹底考察!
『もののけ姫』で個人的に一番凄いと思うのは、シシ神の登場シーンが「無音」で表現されているところ。普通なら荘厳なBGMを流すであろう場面、無音にすることでシシ神の唯一無二さがむしろ際立っている。テレビの前だと感じにくい、映画館場内が静寂に包まれるあの感覚は言葉にできない迫力があった。 pic.twitter.com/psDN3Bcbtd
— INSPI. (@inspi_com) July 4, 2020
ジコ坊たちがシシ神様の首を狙った理由については3つほど考えられます。
- 理由① ジコ坊自身が言っているように、シシ神様の血はあらゆる病に効く、ということ
- 理由② 生と死を司る神であるシシ神様の首には不老不死の力がある
- 理由③ 森の神を恐れない沈着冷静なエボシ御前は、シシ神の森の支配権確立のため、シシ神様の首を狙った
以上3つの理由について、ひとつひとつ見ていきましよう。
理由①シシ神様の血はあらゆる病に効く
ジコ坊たちがシシ神様の首を狙った1つ目の理由として、シシ神様の血はあらゆる病に効くと考えられていたため、だと考えられます。
「シシ神の血はあらゆる病に効く」と、ジコ坊が話している通り、生と死を操る神であるシシ神様の血には不思議な霊力が秘められていると考えても間違いではありません。
現在でも、民間療法としてコウモリの生き血を飲むと癲癇の発作が治まると信じられていたり、鯉の生き血が重篤な病人に効果があると信じられていました。
加持祈祷の盛んであった室町時代、神と敬われるシシ神様の血に病気を治す効能があると考えられたのでしょう。
理由②シシ神様の首には不老不死の力がある
ジコ坊たちがシシ神様の首を狙った2つ目の理由として、シシ神様の首には不老不死の力があると考えられていたため、だと考えられます。
シシ神の首は不老不死の力があると信じられていました。
ジコ坊率いる唐笠連が執拗にシシ神様の首を狙ったのは、その首を取って権力者や富豪に売り渡す目的であったと思われます。
当時の権力者といえば、足利幕府が考えられますが、ジコ坊は「天長様はシシ神退治を認めた」と言っていることから、帝、つまり天皇がシシ神の血を欲しがったとも考えられます。
しかし、平安時代以降、天皇の権威は失墜、弱体化していて、財政的にも苦しかったようです。
それに代わった権力者の足利幕府は、鹿苑寺(金閣寺)を建立した三代将軍の義満に代表されるように、明との交易で得た潤沢な財政基盤がありました。
「不老不死の妙薬を探せ」と厳命を出した秦の始皇帝のように、時の権力者が不老不死の薬を手に入れることに執着するのは、もっともなことのように思われます。
理由③シシ神の森の支配権確立のため
ジコ坊たち(エボシ)がシシ神様の首を狙った3つ目の理由として、シシ神の森の支配権確立のため、だと考えられます。
宮崎駿監督のコメントを引用してみましょう。
「エボシは自分が考えている王道楽土を作りたいだけ。そのために邪魔が入れば殺すことも、犠牲も、自分自身を犠牲にすることもいとわない。」
引用 : スタジオジブリの作品
自分が率いるタタラ場と、その集団のために命を懸けてシシ神の森の拡張を目指そうとするエボシ御前は、沈着冷静で頭も切れ、ライ病患者たちに対しても優しく接する豊かな心を持っています。
反面、目的遂行のためにはタタラ場集団の犠牲者も見殺しにする冷厳な性格の持ち主です。
そんなエボシ御前の目的と、不老不死のシシ神様の首を狙うジコ坊の利害関係が一致。
神のタタリを恐れるジコ坊は、神をも恐れないエボシ御前を巻き込んで、シシ神様の首を狙います。
まとめ
映画「もののけ姫」でシシ神の首を持って逃げるジコ坊と師匠連#自分がオンリーワンだと思うコスプレ晒せ pic.twitter.com/DHQC32LQ48
— 鰐軍壮 (@WANIGUNNSOU) February 27, 2020
以上、ジコ坊たちがなぜシシ神様の首を狙ったのか、その理由を考察してみましたが、いかがだったでしょうか。
その答えとしては、以下の3つが考えられました。
- 理由① ジコ坊自身が言っているように、シシ神様の血はあらゆる病に効く、ということ。
- 理由② 生と死を司る神であるシシ神様の首には不老不死の力がある。
- 理由③ 森の神を恐れない沈着冷静なエボシ御前は、シシ神の森の支配権確立のため、シシ神様の首を狙った。
あらゆる病に効き、不老不死の力があるシシ神様の首。
ジコ坊率いる唐笠連は首を狙い、高額な金品と引き換えに権力者か、あるいは富豪に売りつけるつもりであったと推察されます。
また、シシ神の森を自分たちの楽土にしようと考えるエボシ御前は、天長様がシシ神退治を認めたことをキッカケとして、ジコ坊と唐笠連、そして石火矢衆などの力を借りてシシ神様を追い詰め、見事に首を落とすことに成功します。
しかし、その成功はクライマックスの大波乱へとつながっていくことになります。
シシ神様が歩いた後に草が枯れる理由について考察しています。