今や困民的人気を誇るアニメ『ルパン三世』。
アニメ界の巨人、宮崎駿も『ルパン三世』シリーズを通して何本かの演出を担当し、また自身の長編アニメーションの初監督作品として『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)を発表。
『ルパン三世』には宮崎駿独特の思い入れがあるようです。
今回は、宮崎駿がルパン三世に関わることになった理由について、なぜそうなったのかを考察してみたいと思います。
それまでの宮崎駿といえば、『ひみつのアッコちゃん』や『ムーミン』の原画など、子供向けだったのが、アダルトな雰囲気を持ったルパンへ参加。
そういった理由はなぜか、そのようなことを考察します。
ルパン三世に宮崎駿が携わったのはなぜ?理由を考察
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宮崎駿が『ルパン三世』に携わった理由については以下の3つが考えられます。
- 理由①視聴率低迷からの脱却
- 理由② ルパン再生
- 理由③ 劇場用映画への進出
それでは、一つずつ見ていきましょう。
理由① 低視聴率からの脱却
【今夜放送】
『ルパン三世 カリオストロの城』
日程:2021年10月3日(日)
時間:19:00~(BS12トゥエルビ)https://t.co/84p2JfkR73pic.twitter.com/hWAVeClirc— ジブリのせかい【非公式ファンサイト】 (@ghibli_world) October 3, 2021
大人向けのテレビアニメとしてスタートした『ルパン三世』でしたが、1971年のスタート当時は、『巨人の星』に代表されるようなスポーツ根性ものの影響が強く残っていた時代。
ましてテレビアニメの視聴者のほとんどは子どもでした。
そんな中でスタートしたハードボイルドとお色気の『ルパン三世』は視聴率が低迷。それまで演出を担当していた大隅正秋が降板の意向を表明。代わって登場したのがAプロダクションでした。
東映動画から独立したAプロダクションには、後にスタジオジブリの設立に関わることになる宮崎駿、高畑勲の二人も在籍、『ルパン三世』中盤からは二人の意向に軌道修正されていきます。
もともとAプロダクションは『オバケのQ太郎』『巨人の星』なども手がけていましたから、子ども向けはお手の物。視聴者ターゲットの年齢層を下げたルパン作りが進められます。
多少の視聴率の回復はあったものの、思ったほども伸びなかったため、23話で終了となりますが、『ルパン三世』の人気の下地を作ることには成功したと思います。
低視聴率からの脱却が、宮崎駿がルパン三世に携わることになった最初の理由といえます。
理由② ルパン再生
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宮崎駿は、その後ルパンからは遠ざかりますが、第一シリーズの旧ルパンに代わり、第二シリーズの企画が浮上します。
そのときのことを宮崎駿はこう答えています。
「新ルパン」が始まるというときも「やらないか」という話があったんです。…… 略 ……ぼくは「もうルパンでもないよ」などと返事をしていたんです。
ルパン三世の時代は終わったと考えていた宮崎駿は企画を断りますが、実際に始まった『ルパン三世』第二シリーズを見て、宮崎駿は怒りを感じたと言います。
その怒りは制作者サイドに向けられたもので、なんでこんな人たちがアニメーションなんか作っているのか、といった不満が噴き出すことになります。
第二シリーズのルパンに不満を抱いた宮崎駿は、第145話『死の翼アルバトロス』、最終回の第155話『さらば愛しきルパンよ』で脚本・絵コンテ・演出を担当。
『死の翼アルバトロス』『さらば愛しきルパンよ』の二作は、そのクオリティの高さから他の作品を圧倒。特に『さらば愛しきルパンよ』の作画は半端ではなく、シリーズの人気最高位を独占。
しかし、宮崎駿は大胆にも第二シリーズのルパンはニセモノであり、最終回で登場したルパンこそ現代に生きるルパンであるという主張を盛り込みます。
自分の思い描くルパンを創り上げたいという熱意があったのでしょう。
企画への参加を拒んだ経緯のためか本名は使わず、照樹務の変名で参加した二作品には、前作で原爆、後者の最終回には戦闘用ロボットを登場させるなど、反戦思想の反映も読み取れます。
ルパンは終わったと考えていた宮崎駿は、巨悪と戦うルパンこそがふさわしいと考え、ルパン再生の意図を込めたものと思われます。
理由③ 劇場用映画への進出
ルパン三世「カリオストロの城」デジタルリマスター版、BS12で放送https://t.co/ETe2M7tzgu#カリオストロの城 #日曜アニメ劇場 pic.twitter.com/3U9mR5uIjn
— 映画ナタリー (@eiga_natalie) October 2, 2021
テレビアニメとして人気を獲得した『ルパン三世』は、劇場用映画が企画され、『ルパン三世 ルパンVS複製人間』が1978年に公開されます。
『あしたのジョー』『天才バカボン』などの演出を手掛けていた吉川惣司が監督にあたり、低年齢層を対象としたテレビシリーズに不満を持っていた大人へとターゲットを絞ります。
しかし案に相違して、観客にはテレビアニメのルパンを期待した中・高校生が大半を占め、期待した印象とは違ったものになりましたが、そこそこの興行成績を収めます。
気を良くした東宝は劇場版ルパンの第二作目に乗り出し、監督には大塚康生が選ばれますが、大塚は乗り気になれず、ルパン第一シリーズの経験もある宮崎駿が監督に就任します。
宮崎駿は「ルパンや東映アニメーション時代にやった事の大棚ざらえ」として、劇場映画の初監督としてルパン三世劇場版第二作『ルパン三世 カリオストロの城』に取り組むことになります。
まとめ
今夜の「日曜アニメ劇場」(BS12)は『ルパン三世 カリオストロの城』ね!🌟📺 pic.twitter.com/gymqjFrKnf
— ふぃん (@RZu0UFev6qaF3Jd) October 3, 2021
ルパン三世に宮崎駿が携わったのはなぜ?理由を徹底考察!として見てきましたが、いかがだったでしょうか。
- 理由①視聴率低迷からの脱却
- 理由② ルパン再生
- 理由③ 劇場用映画への進出
元々ルパン三世はヤングアダルトを対象に『漫画アクション』に連載されたものでしたから、子どもを対象にしていた初期のテレビアニメが視聴率の低迷に苦しんだのも無理のないことです。
その後ルパン三世は軌道修正が加えられて、ルパンの性格や表情などもソフトなものになり、若年層向けへと変化していくのですが、当然そこに以前からのルパンファンの反発があります。
そういった反発を受けて製作された『ルパン三世 ルパンVS複製人間』は、ある程度の興行成績を収め、新作が作られていくことになります。
しかし、劇場版ルパン三世の第二作目である『ルパン三世 カリオストロの城』を見ても分かるように、初期のルパンは消え、心優しきルパンへと変貌しています。
『カリオストロの城』は公開当時は興行成績としては第一作に劣りましたが、徐々に人気が高まり、現在ではルパン三世シリーズの人気の首位を独走しています。
ヨーロッパの小国を舞台に、ジュリアン・デュヴィヴィエの名作『わが青春のマリアンヌ』(1955年)を思わせる不気味さとロマンチシズムをたたえた城の雰囲気。
使い捨てライターやカップ麺を食べるルパンや銭形など、古風なヨーロッパの優雅さの中に、当時の日本の世相などを盛り込み、ルパンの庶民性を表現したような描写も目を引きます。
宮崎駿は『カリオストロの城』を最後に、ルパンから遠ざかることになりますが、ルパンのイメージを塗り替えるとともに、作品の質を高めた功績は大きいと思います。
ただ、あらためて『カリオストロの城』を観ると、ルパンの年齢を大幅に引き上げた、と宮崎駿は言っていますが、顔つきなどは初期のルパンより幼くなったような印象があります。
作画の影響なのでしょう、登場する人物の顔や表情なども『フランダースの犬』や『アルプスの少女ハイジ』を連想させ、児童アニメとルパンが融合してしまったようです。
ルパン三世は宮崎駿の功罪がよく表れたものといってもよく、時代遅れとされた所以か、カラッと乾いたハードボイルドのルパンは消え、穏やかな潤いを帯びたルパンに変貌を遂げました。
一方で、クオリティーの高い作画と緻密な描写、歴史や民俗を調べぬいた時代背景など、深い思い入れを持った制作意図がうかがえます。
ルパン三世は生き残り、これからも活躍を見せることになりますが、その根源としてルパンに携わった宮崎駿の力量はとても大きいと思います。